2010/07/30

「虜人日記」小松真一著

あわせて読みたい
「日本はなぜ負けるのか―敗因21カ条」山本七平著
「総員玉砕せよ!」水木しげる作

著者の死後、私家版を読んだ山本七平氏によって評価され、出版に至った。

詳細は「日本はなぜ負けるのか…」に譲って、全く違う視点から著者が太平洋戦争時に赴任先のフィリピンでいかに九死に一生を得たか、を引用してみる。
まずは当初の赴任地台湾から内地へ帰還するとき。
内地帰還 〜 海難
当時、富士丸は最優秀船で速力があるので一番安全な船とされ、この船の切符には「プレミアム」がつく位だったので、、欧緑丸に席を持っていた陸軍将校の人に交渉して交換してもらい、家族一同どうやら同じ船で内地へ行くことになった。… 夜明け、船が止まったので甲板に出てみれば前方に鴎丸が沈没しかかっていた。遭難者が、ボート、筏で流れてくるのを、富士丸と共に救助した。(p.12)

突然、 すぐ目の前にいた富士丸の胴体から水煙があがった。やられたと船室に飛び込み子供等に用意をさせる。窓から見れば富士丸はもう四十五度に傾き、次いで棒立となって沈んでしまった。雷撃後三分三十秒であっけなく姿を消した。(p.13)

富士丸の遭難者の大半を救助した頃、我々の船めがけて三本の雷跡。あわてて船室に帰る。船は急旋回。そのとき、ドスンと大きな音がした。もうだめだ。が、幸い魚雷は不発で助かった。(p.13)
船を変えたおかげと魚雷不発で2回。
レイテ島
生意気な奴と一緒の船の中にいるのは一日でも少ない方が良いので、オルモックで下船してしまった。… この日の夕方、我々の乗ってきた船団はタクロバンに向け出航したが、タクロバン入港直前グラマンの第一回空襲に会い、全員行方不明となった。生意気な少尉殿のおかげで我々は命が助かった。「冥せよ少尉殿」(P.42)
少尉殿のおかげで1回。
大編隊
十三日、自分の誕生日なので尾頭付きで一人祝ってやれと,イピイル工場の桟橋で比人の服装をして魚釣をしていた。すると海上すれすれに二機の戦闘機が飛んでくる。友軍機と思い手を振れば自分の五十米程前で急旋回した胴体と翼に明らかに星がついている。これはいけないと思ったが逃げればやられると思ったのでそのままじっとしていた。(p.45)
比人の服装と態度で1回。
セブ島に帰る・第二回セブ空襲
グラマンが立ち去ったので穴から出てみると今下船した日吉丸は一撃で沈んでいる。上陸が三十分遅れていたら死んでしまうところだった。(p.47)

空襲の間隙を縫って山手の兵站事務所に行く。ここの連中はもう逃げて誰もいない。係員を探しているうちにまたグラマンの機銃掃射を受けた。危うくやられるところだった。(p.47)
太田旅館に泊まる。毎日空襲される。疲れて昼寝をしていると、銀座通りでグラマンにバリバリやられている夢をみた。ふと気づくと本当に身近でバリバリやられている。ほうほうの体で壕へもぐり込んだ事もあった(p.47)
下船のタイミング、機銃掃射が1回づつと空襲。
ロペス酒精工場、コンソリの爆撃に大破
上空にはグラマン六機が獲物をあさっている。まだ突っ込んでくるにまでには一,二分ほどあると思ったので、自分等三人は溝から上がり、近くの防空壕に飛び込む。それと同時にいままでの自分たちのいた溝めがけてグラマンが急降下しながら機銃掃射を浴びせた。壕の窓から硝煙が流れこんでくるくらい間近な弾だった。(p.68)
機銃掃射を察知で1回。
タリサイ酒精工場大爆撃
土民の壕から出て橋のところまで行くと、第三編隊が襲いかかってきた。橋のたもとの坪井大尉専用の壕に入る。今度はタリサイの町の中に投弾された。今出てきた土民の壕は直撃を受けて皆死んでしまった。(p.72)

六回,七回と波状攻撃は工場を中に続けられた。もう消火どころではない。壕にうずくまっているだけでやっとだ。十二時二十分、第一回の爆撃から二時四十分までの二時間二十分の間に十四回のB24の爆撃を受けた。一編隊の機数は六機〜二十四機だ。よくも助かったものだ(p.72)
壕を出て1回。あとは空襲。
コンソリの盲爆
自分の家の周囲にも六,七発落ちた。自室の窓、天井、戸等に大穴をあけられた。近くの比人の家は吹き飛ばされ、比人が十人ほどと水牛、犬、鶏が死んだ。(p.77)
空襲。
タリサイ街道
その日の夕方、神谷氏に出会うと、「今日小松さんたちと別れて五分ほど歩いた頃(我々が土人に椰子を取らせて水を飲んだところ)、自分たちの五米前を歩いていた海軍の軍属の前にゲリラがいきなり現れ自動小銃で彼を射殺したので、慌てて溝へ逃げ込んだところ、警備隊の兵隊が五人程、銃声に驚いて駆けつけてくれたので助かりました。もうタリサイ街道も危ないですよ」と言われた。我々が椰子の水を飲んでいたとき近くにいた比人達も危ないものだった。(p.81)
比人ゲリラで1回。

台湾〜内地〜フィリピンへと移動し、米軍が上陸する前までに以上のようにことごとく助かっている。九死どころではない。もうほとんど運。死んでもおかしくないし、実際、ほか多数は死んでいる。
米軍上陸前は「運」で助かったが、上陸後のジャングル彷徨では、著者の知識と実践力がいかん無く発揮され、また、いよいよ苦しくなったときに見つけた場所がよく、最終的に生き延びた。。
本の後半は、ストッケード(ストックヤード?)と呼ばれる収容所での生活が記述される。

著者が感情に溺れること無く冷静に観察、記録したからこそ、組織としての日本軍、日本人の性質への言及がより鋭く威光を放つ。
輸送船は簡単に沈められ、物資の補給は無し、植民地での傍若無人ぶり、現地で文化を残せない、豪語と不実、リーダの資質不足、友軍の人肉食(著者ではない)、暴力での組織化などなど目を覆うばかり。

この本の価値は結果的にお互い補完関係となる「日本はなぜ負けるのか…」で山本七平氏が自身の経験を交えながら論理的に明らかにされる。

ところで、沖縄戦に関する又聞きの情報が二度現れるが、いずれも、住民のスパイが多かった、という。これが真実なら史実ものだし、そうでなければ、当時の在沖日本軍の地元住民に対する偏見がいかににひどいものだったかを図らずも表していて、興味深い。

2010/07/29

「ガラスの巨塔」今井彰著

こちらも会社の先輩から借りた本。

NHK元職員(プロデューサー)の小説の形を借りたほぼノンフィクションと考えてよさそう。

小説の形にしたのは、NHKに未練が残っているからなのか(断固とした決別姿勢を取れないのは、一部の職員に配慮があるとか、怒っても実名は暴露しない人間ですとアピールして敵を作らないとか)。

アマゾンでの書評を読むと、小説としての出来に不満、暴露本なら実名ですべしなどの厳しい意見もあるが、内部から見たNHKということだけでも価値がある。

NHKは…(遠くを見る)…仕事でお世話になったことがあって、在京5社の民放とは金のかけ方が違うし(TVの国際中継にかける金が民放5社合わせたものと同等だった…十何年も前の話)、そもそもTVもあまり見ていないし、最近の民放が芸人の笑い(=笑いの効果音)に頼っていたり、過剰な演出・効果で民放を見た瞬間に食傷気味となるのでNHKが多いし、かと言って、NHK(NHKに限らないか)のストーリーありきの仕込みが見えた瞬間の興ざめ感とか(期待し過ぎ)いろいろあって、TVに感ずるものは多く、視覚に訴えるものの影響力の大きさに改めて感心したり。そうそう、その時の仕事で海外のサッカー中継で音声は現地の観衆の声だけというのをモニターしたことがあるが、あれは自分もその場にいるような感じでよかったな。

10,000人の職員がいて現場は3,000人とか(あとは何してるの?)、番組優先でない組織のあり方とか、出世競争をめぐる醜聞とか、いろいろ、どろどろ。
一方、番組にはスタッフの意思が込められているという見過ごしがちな点も思い出させてくれる。おかげでエンドロールのスタッフの多さに番組の内容とは関係なく毎回関心するようになった(ひとつの番組を作るのにかなり多くの人が関わっている)。

人を活かせない組織というのは勿体無いと思うが、大組織だと一人一人を丁寧に見ることも出来ず、また、官僚的になり易く、小組織(またはフリーランス)だと人材を活かせる環境にない、あるいは、金がないことが多い。 業種により「人材を活かす組織の規模」というのは最適解があるように思えるが、その最適解の組織が市場で生き残れるかどうかとは関係ない。近年では組織の市場占有か、小組織のニッチ狙い(→大組織に買ってもらう)が生き残りつつある。大いなるジレンマ(この「大いなる」の反語ってなんだろう)。

2010/07/26

「カデナ」池澤夏樹著

会社の先輩からお借りした(無理やり借りさせられた?)。

著者は以前、沖縄に在住したことがあり、この地での暮らす人間から聞いた興味深い話を小説のネタとして随所に盛り込んでいるように思われる。
屋上に飛行機を乗せている店、オクマ・レスト・センターの飛行場、カデナ基地内の描写、国道58号線、プラザハウス、ガマ、B-52の墜落など、ある程度暮らしたものでないと書けない。

4人の主人公がいるが、サイパン帰りのオジーのあるがままを受け入れていった生き方、語り口が沖縄独特のおおらかさを感じさせてうまいと思った。

実は、主人公たち、特にフィリピン生まれの米軍人フリーダが饒舌(いや饒舌すぎる)に語るように、沖縄の声、思いを日本へ届かせようとの著者の思いを小説の形に巧みに(無理矢理?)入れ込んだ本、だと思った。

アバロン Symbolのクセ

この間、ON爺さんご来訪のときに気づいたのだが、このスピーカ、特定のソフトかつ音量高めの場合に低音でボーボーという共鳴音が聞こえる。
これは導入初期に感じた低音不足と合わせてこのスピーカのクセ、負の特徴だと思う。
こちらの記事のコメントにA.Mさんが書かれているように、底面のバスレフポートに何か詰めて再度チャレンジしたいと思う(以前試したときは少し詰まった音がした感じがしたのでやめたことがあった)。

2010/07/25

「アドレナリンジャンキー」トム・デマルコ他著

というわけで、ご紹介。
プロジェクトマネジジメントにありがちな86のパターン。
プロジェクトだけではなく組織をまとめて何らか目的に進む必要がある人には役に立つ。
上意下達、絶対服従のような軍隊的指示系統ではなく、プロジェクトチームメンバーひとりひとりの能力を最大限に活かすマネジメントがベースにある。目的は最高の結果を得ること、その手段がメンバーの能力を最大限に活かすことであり、著者たちの経験に裏打ちされたものである。
パターンをいくつか紹介してみよう。
パターン23「静かすぎるオフィス」
オフィスが静かすぎるのはチームが魔力を失ったしるしである。
静かなときは何かおかしいと察しないといけない。うまくいっているときはボヤキや仕事以外の会話も面白い。チームが生きているのを実感する。
パターン25「沈黙は同意とみなされる」
相手には、あきらめの沈黙と同意の区別がつかない。
… 沈黙のルールによる同意は、次のように訂正される。「同意しなければ同意とみなされない」
不服があるなら黙っててはいけない。
パターン44「ブルーゾーン」
チームに少なくともひとり、いつも与えられた権限以上のことをするメンバーがいる。
そういう人がいないチームはチーム間だけでなく担当者間ですでに壁がある。壁ができると隙間ができる。隙間には何かが落ちていく。落ちたものに気づかない、または見ようとしない組織は自己保身が優先されているのであり、本来の目的を忘れてしまっている。
パターン45「ニュースの改良」
悪いニュースが組織の下から上へ正確に伝わらない。
あはは。
「おそらく1月は無理です」(チームリーダ)
→「正直言って1月は不安です」(プロジェクトマネージャ)
→「1月というのは難題だとは思いますが…」(アプリケーションマネージャ)
→「1月には間に合うと自信を持ってご報告できます」(CIO)
だって。ありがち。
回避するためには(1)対処方法の決定 と(2)原因究明 を行うことを推奨している。また、(1)を優先すれば、「悪いニュースが隠されたりゆがめられたりする可能性が低くなる」とのことだ。
パターン56「知力の集中」
1つのプロジェクトにフルタイムで参加すると、個人のパフォーマンスは向上する。
逆を言うとプロジェクトを同時に複数兼務すると頭の切り替えのオーバーヘッド部分が発生するため、パフォーマンスは落ちる。私も経験しているし、どうしても浅くなりがち。100点満点からは遠い妥協の結果を迎える。

この本は著者たちの長年の経験と深い洞察から得られたパターンを提示しているのでほとんど異論がなかった。
ただ、マニュアルではないので実地に活かすにはこの本の中身を咀嚼し消化しておく必要がある。

2010/07/21

ON爺さんご来訪


ということで(えっ、どういうこと?という人はこちら)、オーディオの先輩のひとりであるON爺さんが来訪された。
ON爺さんは、PCオーディオの可能性にいち早く目覚め、目覚めるだけでなく、自身のサイトや雑誌を通じて情報発信なさっている。そのバイタリティに圧倒されるばかり(爺さんは謙遜ですねぇ)。昨年あたりからPCオーディオ方面へ誘導されているんじゃないかという気がするが、実際そうで、ちょっとしたものをお貸しいただいた。PCオーディオばかりでなく従来のオーディオシステムもかなりの強者である(というかそういう基礎があるからPCオーディオでもブレない)。

沖縄が縁でお知り合いになったのだが、大阪の以前のご自宅にも1号(♂10才)が4才の時に一緒にお邪魔したことがある。その時は1号がON爺さんのパスタ調理中にひとりでフランスパンをほとんど食べてしまい(確かに美味しかったが)、ON爺さんの楽しみをひとつ奪ってしまった。あの時は本当にすみませんでした。

今回も、パスタにワイン、子供たちの相手と、いろいろどうもありがとうございました。 >ON爺さん

写真上
今回は3回目、新居になって2回目のご来訪でiPadを持参してくれた。2号(♀5才)とiPadで戯れる。2号も面白かったようで、やっぱり革新的なデバイスだな。

写真中
ON爺さんお手製のニンニク入りナーベラー(ヘチマの沖縄名)パスタを囲む。ナーベラーの新境地をご披露。バジルの代わりにフーチバー(ヨモギの沖縄名)も使った。

写真下
外は明るいがもう19時半頃。お夕飯のま最中。2号がどういう理由で何を指しているかは不明(一目瞭然?)。

2010/07/20

備忘録(半年分)

ここのところポストが滞っている。
書きたいものは3月ころから溜まっているのだが…。
とりあえずのTo Do Listとして以下にリストアップ。

3月に立て続けに亡くなった近しい人3人。
小さいオバー(オバーの妹、母親の叔母さん)
近所のトウメさん
東京時代の沖縄の先輩ウエザトさん

通勤中に読んだ本。
アドレナリンジャンキーズ、トム・デマルコ他
カデナ、池澤夏樹
ガラスの巨塔、今井彰
日本の弓術、オイゲン・ヘリゲル
那覇軍港に沈んだふるさと、上原 成信
虜人日記、小松真一
日本はなぜ負けるのか―敗因21ヶ条、山本七平
人間集団における人望の研究―二人以上の部下を持つ人のために、山本七平
勝負師の妻、―囲碁棋士・藤沢秀行との五十年、藤沢 モト
沖縄 シュガーローフの戦い―米海兵隊地獄の7日間 ジェームス・H. ハラス(猿渡 青児 訳)

オーディオの先輩の一人、ON爺さんご訪問

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